
中絶をパートナーと一緒に考えるうえで、
あらかじめ男性に知っていただきたいことをまとめました。
産婦人科のある医療機関であれば、どこでも人工妊娠中絶手術が受けられるというわけではありません。人工妊娠中絶手術は、母体保護法指定医師、つまり、特別な認可を受けた専門の指定医の元でしか許可されていません。人工妊娠中絶手術が可能なのは法律的に満22週未満とされていますが、妊娠週数は医師が判定します。手術方法は医師によって多少異なることもあるため、あらかじめその病院の方針をWEBサイトなどで調べておくことも大切です。
まず妊娠週数の数え方ですが、最終生理開始日を0と数え、11週までが妊娠初期です。この時期の手術はほとんどが日帰りで、その分費用も抑えられます。妊娠中期となるのは12週目以降21週目まで。中絶手術を行えるのは母体保護法においてこの時期までです。中期手術では死産届けが必要になり、費用も高額になります。
妊娠週数によって変わります。表をご参考になさってください。
手術の前には必ず医師の診察が必要です。診察では妊娠の状態の確認をし、 血液検査を行います。必要書類(同意書)や手術内容などについて丁寧にご説明し、手術の日時を決めます。また待合室で人に見られたくないといった事情があれば、メールやお電話でご相談ください。病室で待機していただくなど、できるだけご希望に沿える方法をご提案いたします。なお、お問い合わせはご本人さま(手術を受けられる女性)よりお願いいたします。
手術には、必ず手術を受けるご本人と、パートナーの方の署名・捺印のある同意書が必要です。パートナーとは、次の関係にある方です。
- 民法上の届出による、正式な婚姻関係をもつ人
- 届出はしていないが、実質的に夫婦と同様の関係にある人
ただし下記の場合、ご本人のみの同意書で結構です。
- 母体保護法第14条第2項(強姦などによる妊娠)に該当する場合
- 妊娠後にパートナーが亡くなられた場合
その他色々事情は考えられます。遠慮なくご相談ください。
静脈麻酔をかけ、子宮内の内容物を掻爬(そうは)や吸引術を行うことで取り除く方法、プレグランディンという薬で人工的に陣痛をおこし、流産に導く方法などがあります。いずれも週数が進むほど母体への負担も増えてきます。できるだけ早めにご相談・受診されるよう勧めてさしあげてください。
12週以降の中期中絶については、手術後、市役所に死産届を提出(戸籍には記載されません)することが法律で義務づけられています。また火葬による埋葬も同様に定められていますが、役所の許可なく胎児を運んだり埋葬したりすることはできません。ご希望があれば、そうした手続きは当院で代行させていただきます。もちろんご自分で行いたいという方には、対処法などについてアドバイスいたします。いずれも、赤ちゃんを亡くしたお母さんにとっては、心の整理をし、前を向いて人生を進むために大切なことです。
望まない妊娠をはじめから避けるためには、避妊の知識を深めることが必要です。お互いの愛情をより深めるために、正しい避妊の方法を知りましょう。方法は様々ですが、代表的なものとしては、下記の方法があります。
低用量ピル/薬物添加IUS/コンドーム/緊急避妊ピル など
それぞれに避妊の確率も違い、またピルにも様々な種類があるため、当院では相談のうえ適切な方法をその都度ご提案致します。

中絶をしたことによって心の傷が残らない様に、
男女ともにケアが必要です。
中絶は女性の心にとって極めて重い出来事です。中絶を終えた女性は空虚や罪悪感、悲嘆、不安、さらには中絶に至った相手との関係性の問題など、誰かに相談したいと思う反面、中絶をしたという後ろめたさから話したくない気持ちの両面を抱え、独り悩まれている方も少なくありません。また妊娠を知ってから中絶を選択するまでの期間に、男性との気持ちの行き違いなどから、男性不信におちいる女性もいます。こうした心の負担を少しでも軽くすためにも、男性による精神的な支えが必要なのです。どうか、あなたのパートナーに寄り添い、支えてさしあげて下さい。
統計では妊娠中絶をした人の約半数にストレス症状が表れ、約2割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられるそうです。PTSDの原因が中絶にある場合、中絶後遺症候群(PAS)と診断されます。中絶後の悲しみや罪悪感を多くの女性が抑圧しようとするので、精神の不調となって表れます。PASの主な症状は過剰な驚きの反応、怒りの爆発、不眠、フラッシュバック、記憶障害、うつ状態など様々です。専門家のカウンセリングを受けるとともに、パートナーの精神的な支え・同じ痛みをもった人とインターネット上で助け合うという方法もあります。
妊娠中絶が男性に与える影響は様々です。例えば、人間関係の破綻・性的機能不全・自己嫌悪・自傷・消えない悲しみ・無力感・罪悪感・うつ・情緒不安定などがあります。また、中絶をさせたという精神的ショックから、男としての能力が失われたような感覚に陥る人もいます。このように中絶は、女性だけでなく男性にも様々な影響を与えます。1つの命の重みは男性にとっても女性にとっても同じです。相手のことを真剣に考えているからこそ、このような問題も出てくることがあります。一人で抱え込まないことが大切です。当院では、男性の心のケアも重要であると考えています。

※ 当院へのご相談は、手術を受けられる女性の患者さまご本人よりお電話(078-821-0303)いただくようお願い致します。